電気の資格と言えば、電験3種。正式名称は第3種電気主任技術者。そもそも電験3種とはなにか。電気主任技術者とは、電気管理技術者とは何か。そして、電気主任技術者と電気工事士との違いを整理してご説明します。
第3種電気主任技術者とは
電気事業法という法律では、事業用電気工作物・自家用電気工作物の工事、維持および運用のための電気保安監督者として電気主任技術者を選任することになっています。
法律の用語は難しい言い方をするのですが、
事業用電気工作物とは平たく言えば、電力会社の発電所や変電所、送電線、配電線路などです。自家用電気工作物とは、ビルや工場等の600Vを超えて受電する需要設備のことです。自家用電気工作物も事業用電気工作物に入ります。
一般家庭で電力会社から100V/200Vの電気の場合には、一般用電気工作物といって、電気主任技術者の選任は不要です。
では、なぜ電気主任技術者の前に第3種とつくのかを説明しますね。
これには、扱う電圧によって分けられるのですが、
・第1種電気主任技術者:すべての事業用電気工作物が対象。電圧は無制限ということですね。主に電力会社の社員の方が多いでしょうか。
もちろん電力会社でも一部の人ですけどね。
・第2種電気主任技術者:電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物。電力会社はもちろん、電気をたくさん使うビルや工場・商業施設
等で選任される電気主任技術者ですね。一般的にみて、大きい施設だなと感じる施設にあたります。
・第3種電気主任技術者:電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物。国内の家庭を除いたほとんどの施設が該当します。中小規模の工場やビル商業施設その他諸々の施設が該当します。
このように、扱う電圧によって第1種・2種・3種と分かれています。
そして、一番必要とされている資格が施設の多い第3種電気主任技術者すなわち電験3種の合格者ということになりますね。
そもそもなぜこの第3種電気主任技術者の資格を持つ人が必要なのか。電気はご存知のように見えない性質のものです。
そして、扱う電圧によって人が感電して死亡したり、いろいろな要因で絶縁不良を起こし漏電して火災になったり、施設側の問題で地域に長い停電を引き起こしてしまったりと大きな問題に発展してしまうのです。
電力会社側の問題で停電するのではなく、ある施設側(これは需要家側といいます)の問題で地域が停電することがあり、これを波及事故といいます。
聞きなれない言葉かもしれませんが、各家庭や工場・ビル・商業施設その他電気を使うところ全体に経済的にも、もしかしたら人命的にも影響を及ぼすかもしれません。
もしかしたらと言ったのは、病院とかがありますが、停電したら人命にかかわる場所は万が一を考え自家発電装置を持っているのです。手術中に電気が止まったら困りますよね。どこの施設でも現代は、電気の文明ですから電気が止まれば困るわけです。
そこで、需要家側でも安定かつ安全に電気が使えるようにするために、電気のプロとして電気主任技術者を選任する訳です。
電気はもう空気のように当たり前に使っているわけですが、設備の不具合によって電気が止まらないよう電気の保安の監督を任せられているのです。
資格の歴史としては、明治時代から続くかなり長い歴史をもつ電気主任技術者ですが、いままでの話のように、非常に重要な任務でありますので国家資格試験でも難易度の高い資格です。
電気の知識を必要とされるため、電気系の資格取得を目指す人にとっては、あこがれでもあり電験3種は電気技術者の登竜門なのですね。
第1・2種電気主任技術者とは
先ほどの話で、第1・2種電気主任技術者は扱う電圧によって分かれているのですが、実務的には第3種とほとんど変わりません。ですので、試験で合格する方ももちろんいますが、第3種電気主任技術者の実務経験で第2種を取得し、第2種電気主任技術者の実務経験で第1種を取得してるかたもかなり多いです。
しかも、試験で合格するためには、高度な電気数学の知識が必要であり、難易度はかなり上位です。筆記試験と面接試験の両方あるので、筆記だけ合格しても、面接試験で落ちる場合があるのです。
大学や短大で電気に関する必要な単位を取得し、会社に入り実務経験を得て取得することはできますが、現実にはあまりいないようです。でも電気系資格の最高峰ですので、特に若い方たちには、挑戦してみる価値の高い資格でもあります。どんな取得の仕方でもよいと思いますし、どんな資格でも形だけでも残しておけば役に立つのは言うまでもありません。
電気管理技術者とは
今まで電気主任技術者を説明してきましたが、ここでは電気管理技術者を説明します。電気管理技術者の実務は第3種電気主任技術者とほぼ同じと考えてもらっていいと思います。
一般の企業で電気を高圧で受電しているところが多いのですが、社員の中でこの資格を持って選任されているところは少数です。でも法律的には選任しなければならない。これを解消するために、個人事業で電気主任技術者を行うことができる方が、電気管理技術者とよばれる人です。つまりこの業務を専門にしている個人事業主ということですね。個人事業主として独立を目指す方はこの電気管理技術者とならないと商売ができません。
電気主任技術者として第1種は3年、第2種は4年、第3種は5年の実務従事経験が必要となります。この実務従事経験というのは、たとえば、第3種電気主任技術者を取得して、ある会社の社員として高圧の受電設備5年以上電気主任技術者として専任で業務をしたことを実務経歴証明書に会社印を押してもらい、初めて管轄の経済産業局に提出し、担当官と面接して受理されると晴れて電気管理技術者となることが出来ます。
ここでも簡単に会社印を押してもらう、と書きましたが会社の上司や会社と喧嘩別れしてやめてしまうと、会社にとって何の利益にもならない事で会社印を押すことなどあり得ませんので、円満退社するこは非常に大事です。目指す方はここは大事ですので気をつけてくださいね。
しかも個人事業ですから、本当に一人だけで解決できるのならよいのですが、現実は○○電気管理技術者協会に入って個人事業をしているかたがほとんどです。
そして持たなければならない測定機器や試験機等それなりに初期投資が必要です。
他にも、○○電気保安協会のように法人化されたところが全国的にたくさんあるのですが、やはり電気管理技術者のように企業から委託されているところはたくさんあります。
法律的には、電気管理技術者や○○保安協会に委託することを、外部委託承認といっています。
第1・2種電気工事士とは
この資格は、電気工事士法という法律から電気の工事ができる資格者を言います。やはり電気主任技術者をいきなり目指す前に、実際の工事から経験を積んでいくほうが王道かもしれません。
実は自分の場合、第2種の電気工事士すら持たずに、電験3種に挑戦したのです。電気主任技術者の実務経験から第1種電気工事士を該当の県知事よりいただきました。
いわゆるズル取得ですね。
それはさておき、
・第2種電気工事士とは、600ボルト以下で受電する設備の工事に従事することができる。一般用電気工作物、つまり一般的家庭や工場、ビルやその他、低圧の電気工事ができるのです。電気工事士でなければ電気工事してはいけないものがありますので、資格を持たずにちょっと電気の知識があるからと言って、素人工事をすることは事故につながります。その工事の不備によって、人命や火事にでもなってしまったら大変なことになりますので、注意しましょうね。
やはり、電気の理論の基礎や配線設計、配線器具、施工方法、法律等々工業高校電気科レベルの内容が中心になりますので、最初に電気関係の業務をされる方にはうってつけの資格です。将来を見据えて、第1種電気工事士から電験3種を目指す第1歩となる資格ですので、是非第2種電気工事士の資格は取得しておくことをおすすめします。
そして、この資格は筆記試験だけではなく、技能試験も合格しなければなりませんので、技能練習もやっていないと取得できません。
電気工事会社の下働きから始める人もいますし、通信講座でも技能練習が出来ます。年齢も性別も関係ありません。
・第1種電気工事士とは、事業用電気工作物(自家用電気工作物も含む)最大電力500キロワット未満の需要設備の工事に従事することができる。第2種電気工事士ができる
範囲も従事することができる。いわゆる高圧の電気設備の工事ができるのです。
これは第2種電気工事士の上位の資格でもあるため、電気工事の経験がある程度長い人や電気の知識も第2種以上に必要とされるものです。自分はズル取得ですけど。
順序でいけば第1種電気工事士を取得してから電験3種が王道でしょうけど、第2種電気工事士を取得してから電験3種を受験する方も結構多いと思います。実際、電験3種を大目標にしている方は、このパターンのほうが取りやすいと思っているかたは多いでしょうね。
それでも高圧の工事関係をやる方で極めたい方は、第1種電気工事士の取得は必須でしょう。やはり工事における信頼度も違いますし、範囲も広がるからです。
・さて、第1種工事士の工事のできる範囲ですが、最大電力500キロワット未満の需要設備の工事に従事することができることを説明しましたが、かなりの割合で自家用電気工作物の需要設備は最大電力500キロワット以上が現実多くあります。
第1種でも工事できないのにたくさんある自家用電気工作物はどうするの?と自分も電気工事士の工事できる範囲の表をみて不思議に昔は思っていました。
なんのことはないのです、電気主任技術者が保安監督してなぜか無資格の人でも工事OKとなってしまう不可思議なことになっています。現実は電気工事士の資格を持っている人が電気主任技術者の保安監督の下、工事をしているのです。つまり、電気主任技術者がすべて責任を持って工事を行うということなのです。