電気主任技術者人生最大の事故で学んだこと!二度と起こさないためには

電気主任技術者人生最大の事故で学んだこと!二度と起こさないためには

まだ電気主任技術者人生として歩んでいますが、今までのところで自分が経験した中での最大の事故例を紹介してみます。電気の技術者を目指す方や現在仕事をされている方々に少しでもお役に立てて、二度と起きないようにとの思いで紹介をしてみます。

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事故発生の概要

この事故は自分がまだメーカーの工場の電気主任技術者を選任していたころに起きました。その日は土曜日で、自分は休日で家にいました。別棟で設計・開発の試作室
の分電盤の子ブレーカの2次側の配線2か所の追加工事を実施していたのでした。

工事内容は特別大きい工事でもなく、普段からよくやっていた工事なので、特別自分がいる必要もなく、同僚が工事を担当していて今回の工事も電気工事業者に仕事を
委託をしていたのでした。

午後になって、自分の携帯ににその同僚からあわてた声で連絡が入ったのです。「大変なことになっちゃった!分電盤から火が噴いて分電盤全体が焼け焦げた!」
この時、母屋の照明も一瞬暗くなったと後で聞いた。

電話を聞いた自分は、一瞬脳みそにそれこそ電気が走りました。「わかった、今すぐ行く!けが人は?いない。よかった」

さて、私服のまま駆けつけた自分はその現場をみて、茫然としました。生まれて初めてこんな光景を見たので当然でした。

分電盤は焼け焦げ、中の銅バーはドロドロに溶け、当然他の子ブレーカー焼け、よくけが人が出なかったものだ。

頭は真っ白、事故現場の室内も真っ白

そして、その分電盤のあった室内は運よく延焼もせず、分電盤だけの被害で済んだ。

しかし、これは設計・開発の若い連中が機転を利かせ、火が噴いたところで、近くあった消火器で分電盤に向かって吹きつけたからだったのです。

後にも先にもこの連中のように、機転が利かなかったら別棟は大火事になっていた可能性大でした。(心より本当にありがとう!)

消火器放出もあったので、室内中真っ白。自分の頭の中も真っ白。茫然としましたこの時は。

事情を同僚に聞いてみると、分電盤のブレーカーの追加工事をしたときにどうも事故は起きたようだ。そして火が噴いたときに、危険を感じ分電盤の中扉と外扉を閉めて自分に火が当たらないようにしたようだ。この扉が開いたままだったら、電気工事業者も大きいやけどを負っていたかもしれない。

いま考えただけでも、背筋が寒くなります。

原因は何?

電気工事業者にその時の事情を聴きましたが、自分は何もしていないの一点張りでした。でも工事中なので、なにかあったと自分でも感じていました。

この事情は当然上司にすぐ報告して、総務部長や課長クラスも駆けつけました。当時自分の所属は総務部でしかも安全衛生事務局などという仕事もしていました。

起きたことに関しては、上司たちは意外と冷静でしたね。自分も駆けつけた時は頭は真っ白でしたけどその時は冷静でした。

電気工事業者に事情を聴いているころから、だんだんと冷静さを失う自分がわかりました。なぜなら、工事責任は自分が指示したわけでなく、同僚が依頼したものでも電気主任技術者として工事の責任があるからです。なんとなく不条理でしょ。

波及事故や感電事故死や負傷者が出たわけではなかったので、経済産業局への事故速報(当時は48時間以内、現在は24時間以内に変わりましたけど)は不要と判断した。

よく知ってるツーカーの間柄で、その当該電気工事業者が焼け焦げた分電盤の電線等を切ったり、処理をしようとしていたので、少しキレ気味になってしまった。
「なぜ、いじるの!!」これは証拠隠滅にもつながるし、保険のことも頭をよぎったので即座にやめさせた。

この時の推定原因は、ドライバーかペンチまたは、端子のボルトを銅バーの間に落としたとしか考えられなかった。実は今でも原因不明ですが、銅バーは電気が生きて
いるので、そこに導電性のものが落ち短絡すれば、本当ならMCCB(配線用遮断器)250Aが働いていいはずなのに。

しかし、ドライバーぐらいの細いものは、250Aの電流を流すことはできず、ヒューズのように熱を持って切れてのだと思う。だから250Aまでいかず溶けてはじかれたドロドロになったものが他の銅バーに飛び火し、さらに扉を閉めたので分電盤の中で火の玉がはじけまくったのではないかと今でも推測している。

この経験で250AのMCCBのブレーカーなんてそんなに簡単におちないものだとつくづく思った。そして、幅広の銅バーなんて、本当に飴細工のように簡単にふにゃふにゃになり溶けてしまうのだ。
これはでかいヒューズだと思うようになった。技術的にはその電気機器が持つ定格遮断電流というものがある。本来ならば短絡しても機器が溶断する前に保護回路がはた
らかないといけない。

被害は最小限にとどめたが、その後始末は大変

はっきりした事故原因は不明のまま、とにかく、設計・開発の試作室が使えない状態ですから、一刻も早く分電盤を新規に取付て、設計業務に支障が出ないようにしなけ
ればなりません。

設計開発部門というものは、急ぎの仕事も多く、徹夜なんか当たり前の部署ですから、突貫工事で新しい分電盤を電気工事業者に製作してもらって、ものすごい人をかけて次の日には使えるようにしました。普通なら3日ぐらいかかるのに、この時は電気工事業者も必死でしたね。

まず何はともあれ、人間に被害が出なくてよかった。もしこれが人間に被害出ていたらと思うと背筋が凍ります。

後は上司含め、後始末に入るのですが、これがまた大変でなにがどのくらいの被害で、どのくらい金額になるのか算出しなければならないのでした。つまり保険ですね。
この時は、電気工事業者の保険を使ったのでした。ある意味、事故を認めたかたち。その仕事に1週間ぐらいはとられたのです。

そして、一番上の上司が総務部長で実は非常に助かったのです。安全衛生委員会の開催元は総務でしたので、自分のところの責任で今回の事故が起きたかたちにはしなかったのです。しかも自分はその事務局でしたので、今回の件も含め議事進行を務めていましたので複雑な気持ちでしたね。

本当は電気工事業者の問題だと99%思っていますが、電気主任技術者の立場は本当に責務が重く、本来ならば電気主任技術者の問題だといわれても仕方ないのです。
不条理ですけど。

二度と事故を起こさないために

こんな事故を起こさないためにした対策は、分電盤の電気工事を行うときは、分電盤の主幹を切る!ことにしたのです。

えっ、そんなの当たり前でしょう、というと思いますが、現場は電気がないと仕事ができないので、普通、子ブレーカーの2次側配線ぐらいで分電盤の主幹ブレーカーを落とすことはないでしょう。

でも、この事故以来、主幹を落として工事をするようになりました。どうしてもダメなときは夜間に工事を行うことにしました。

工事を簡単に考えては本当にいけないとこの事故からは深く考えるようになりました。

本当は事故など無い方がいいのですが、長年電気の技術者をやっていますと、あるんです事故が。でも今はこうやって少しでもお役に立てることがあれば、恥を忍んでどんどん書いていきますよ。

そして、こんなに重い責務を感じながら仕事をしている電気主任技術者の賃金UPと地位向上のために微力ながらこれからも書いていきますね!

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