電気主任技術者にとって、各種リレー試験の結果は重要です。過電流継電器・地絡継電器・地絡方向継電器・不足電圧継電器等の試験結果により電気主任技術者は判断しなければなりません。でも、実は自分が電気主任技術者になりたての頃、あまりこの試験のことがわかっていなかったのです。なんとも情けない話ですが、電験3種を合格しても実務の仕事が本当はよくわかっていないことに、愕然としたものです。電気の専門家として知らないということは恥ずかしいことですが、実務で勉強していけば何をやっているかわかるようになるのです。
目次
そもそもリレー試験とは
高圧受変電設備の電気年次点検は1年に1回はあると思いますが、そのときに行う、リレー試験とはなんなのか、一般的に行われる継電器(リレー)試験の概要をご説明します。次にご説明する各リレーの名前の括弧内の数字は、制御器具番号といいまして、この数字で言う方もいらっしゃいますので書いてみました。
電気主任技術者になりたての頃は、27(にーなな)って言われてなんのことか分からなかったのです。弱電コンピューターの周辺機器を製造したものとしては、まず使わない番号でしたので。正直そのときは100Vより上の電圧などあつかっていなかったんです。
過電流継電器とは(OCR 51ごーいち)
過電流継電器(かでんりゅうけいでんき)は、電線や電気機器への過負荷や短絡を防ぐ目的で使われる継電器である。OCR (Over Current Relay)と表記します。簡単に言うと、高圧の配線用遮断機(ブレーカ)だと思ってください。
高い電圧で、大電流が電気機器に流れたら大変なことになるのは想像できますよね。正直高圧電路でこの経験OCRが働いたことはありません。あったら大変ですけれど。大概は次に説明する地絡継電器か地絡方向継電器が働いて、開閉器(PAS)が開き、電気がこなくなる方が圧倒的に多いですけどね。
過電流継電器は誘導円板形と静止形の2種類あるのですが、誘導円板型は昔からあるもので、現在も古い受電設備にはよく使われています。結構長年使うには特性の変動が少ないような気がします。しかし現在では静止型といい、電子機器つまり半導体で継電器の働きをするものがほとんどになりました。
8年ぐらいすると交換推奨時期になりますね。
あくまでもメーカー交換推奨時期ですが、やはり毎年リレー試験して特性があまり変動してなくても、交換しておいたほうが得策です。中のコンデンサーの容量抜けで誤動作してしまっては困りますので。当たり前ですが、受変電設備の電気が遮断されれば、使用している末端の低圧100V200Vが供給できなくなりますので、電気主任技術者としては重大なことになります。
地絡継電器とは(GR 51ごーいち)
地絡継電器は、電路のケーブルや機器の絶縁が劣化、または絶縁破壊され、電路と大地間が接触して起こる地絡事故を検出する機器です。地絡はイコール漏電と考えていいです。非常に重要な継電器です。使っている側の高圧機器の絶縁不良によって、波及事故とならないよう電力会社との保護協調が必要です。
この保護協調、簡単にいいます川の流れのように思っていただければいいんですが、電力会社が上流とすれば、使用する側がいっぱいいますのでひとつひとつを支流と考えます。その支流のひとつが滝のように下に流れ出すと、つまり電気でいえば地絡・漏電した状態になりますと、その支流にいっぱい水が流れてしまうのです。いっぱい流れないように、電気では開閉器を開いて電気が流れないようにするのです。
そして上流の電力会社が実は先に配電所・変電所で落ちないようにリレーのタップが2とか3とかを電力会社と決めておくのです。簡単にいうと、これが保護協調です。
簡単にイメージしていただくと、自分たちが普段使っている100Vの漏電ブレーカが、分電盤の主幹の漏電ブレーカより先に落ちることなんですね。そうでないと主幹のブレーカが先に落ちてしまっては、その主幹にぶら下がっている子ブレーカに電気を供給できませんよね。ですのでこれを高圧も同じと考えてもらえればいいですね。
電気の説明って技術屋さんがすると、やたら聞いたことの無い名前や数字を多用するのでわかりづらいと思います。今の自分の説明は、厳密性には欠けてますが、どうでしょうイメージできました?
地絡方向継電器とは(DGR 67ろくなな)
先ほどの地絡継電器に”方向”という文字がはいったのですが、これは電源側(殆どの場合、電力会社ではなく、他の支流、つまり他で受電している施設等で地絡をおこす)の問題か、使っているこちら側の問題か、もし使っている側ならば使っている側だけで継電器が働き、電源側ならば継電器が働かず過電気が止まらないようにすることができます。
電圧と電流の位相差で働くのですが、この原理はベクトルでの説明になりますので、ここでは説明しません。
不足電圧継電器とは(UVR 27にーなな)
不足電圧継電器(ふそくでんあつけいでんき)UVR( Under Voltage Relay)は、電圧が低下し、機器の稼働に必要な電圧が不足しているときに働く継電器です。
主に非常用発電機の起動信号用に使われていることが多いですね。今自分が選任されているところは、2回線受電の予備線電力で受電していますが、この27で切替器(DT ダブルスロー)をはたらかせているのに使っていますね。
電力会社に連絡してから、予備線→本線に戻すときがやっかいですけれど。雷の時期はいやですね。27が働きます。
この試験結果で電気主任技術者はどう判断する
ひとつ重要なことをあげるといずれの場合、基準値内で合格であっても毎年の試験結果がだんだんと基準値内から外れる場合は改修を検討することです。
過電流継電器の場合
静止型の場合、半導体ですので電子部品特にコンデンサーの容量抜けによる誤動作は非常に怖いですよね。特性が基準値内から離れていく傾向があるときは早めに改修を検討
することをオススメします。
誘導型は機械的な部分が多いので意外にも長持ちするものですが、メーカー交換推奨時期がきましたら、改修の検討を行ってください。
いずれにせよ、重要な継電器ですから、もしも働かなかったときのことを想定すると被害は拡大します。本当に短絡等発生して動作しない場合、波及事故も含め機器への甚大
な影響、復旧にすごく時間がかかるかもしれないことがありますので、電気主任技術者の立場として早めの改修が大事となります。
地絡継電器の場合
半導体の電子部品でできているので、こちらも特性的に基準値から離れていく傾向があるときは、基準値内でも交換を検討してください。
また、この試験の場合、PASとの連動試験は重要です。特に1回目のときの開放されるまでの時間は、2回目以降とよく違うことがあるからです。1回目の開放されるまでの
時間で判断してください。
地絡方向継電器の場合
同じくこちらも電子部品でできているので、こちらも特性的に基準値から離れていく傾向があるときは、基準値内でも交換を検討してください。
地絡継電器と同じく、PASとの連動試験1回目に注意をお願いします。
不足電圧継電器の場合
同じくこちらも電子部品でできているので、こちらも特性的に基準値から離れていく傾向があるときは、基準値内でも交換を検討してください。
上記同じような内容になってしまいましたが、いずれも交換を検討するのですが、そこの事業所のオーナーつまりは費用負担するところへの進言が大事ですね。電気は見えないものだし、機械的な稼動部分は殆どないし、空気みたいに使う側は考えています。そこでの電気主任技術者としてのアピールする場ですから、普段からオーナーとの関係を良好に保っておくことも非常に大事です。
見出し3:自分で試験機の操作方法を覚えることは有意義である
最初のうちは、試験機が何をやっているのかわからなくても問題はないのですが、やはり試験機操作に慣れれば、おのずと継電器試験がもっとよくわかるようになるのは当然ですね。
自分の場合、ずいぶんじかんが経ってから実際に試験機を使って覚えたというのが実情です。それまでは、試験結果だけしか見てません。でもまた現在のビル管理の電気主任技術者になってからは、また試験結果のみので印を押すということになりましたけどね。
ただし、自分が実際に試験機操作していたので、昔とは違い何を意味しているのかは深く分かるようになりましたけどね。
実はリレー試験の操作ができなくても仕事はできる
電気主任技術者は、リレー試験できなければならないとはうたわれてはいません。実際、試験機も無ければ(これが個人でも持つと結構高いのです。そして毎年の校正費用もかかります)手馴れた手つきで操作も出来ませんし、日ごろから操作している人たちにはかないませんね。
でも、その試験結果によって判断し是正していくところが電気主任技術者の大事なところですので、勘違いされないようにしてください。ここが電気主任技術者の仕事です!